精神科で仕事するとなると必ずと言っていいほど付きまとうのは、患者による暴力です。精神症状に左右されて、暴れている患者をイメージする人もいるかもしれませんが、殴る、蹴るなどの暴力に限らず、暴言も暴力に含まれます。また患者自身が自分を傷つける自傷行為や自殺未遂なども暴力となります。
できれば、看護師である自分も、暴力をふるう患者本人にも、暴力の被害にはあってほしくありませんよね?
今回は、暴力がなぜ発生するのかの原因や特徴を解説します。
暴力とは
暴力とは、「他者に対して破壊的であること」を指します。
暴力と一言でいっても、身体的暴力、精神的暴力、セクシャルハラスメントとにわかれ、いずれにしても他者に対して破壊的である行為には変わりません。
暴力は上記のようにさまざまな種類があります。暴力の重要な点は、暴力よる身体的な影響のみならず、精神的な心的外傷も与える点です。また暴力を受けた被害者と暴力を振るった
加害者という視点で見られがちですが、そこには、患者の精神症状や患者をとりまく環境などの影響を受けていることを忘れてはいけません。
暴力が起こる原因や要因とは
暴力が起こる原因には、患者自身の要因、患者をとりまく環境要因、患者からの暴力受ける他の患者や家族、医療スタッフの要因に分けることができます。
患者自身の要因
暴力の原因として、一番大きなウェイトを占めるのは、患者自身の要因です。患者自身が精神症状に左右されて、興奮し暴力へはしっていることは、精神科ではよくあるケースです。
精神症状としては、幻覚・妄想、せん妄、躁状態などがあります。
幻覚ではナースが近づいてくることが白い怪物に襲われそうになっているように感じ、身を守るために暴力を振るうこともあります。
妄想では、この人に悪いことを言われているから許せないという被害妄想を修正できず、暴力に至る場合もあるでしょう。
薬物やアルコールによる離脱症状の焦燥感が高まり暴力を振るう場合もあれば、薬物やアルコールによる離脱せん妄による暴力もあります。
躁状態で思考がまとまらず、静止する看護師や家族の手を振り払おうとしたものが暴力と捉われることもあるでしょう。
精神症状によって、患者が暴力に至ることはよくあるケースです。とくに入院直後や隔離が長期に渡ると出現するリスクも高いです。
患者の精神症状はよく観察して対応できるようにしましょう。
患者をとりまく環境要因
自宅であれば、自分の部屋やリビングが汚れていることや動線が悪くて状態が悪くなることあるでしょう。また、患者がルーティーンとしている動作が妨げられると刺激になる場合もあります。いつも使っているものが、いつもの場所にないことや、いつも使っている道が工事で通れないなど環境要因はさまざまです。
他の患者、家族、医療スタッフの要因
患者のみならず、その周囲の人が原因となって暴力に至るケースもあります。
例えば、状態の悪い患者から心ない言葉で、暴力に至ることもあります。
また家族は、患者本人に近いからこそ厳しい言葉や仕打ちをしてしまい、患者の精神症状を悪化させてしまう場合もあります。
最後に医療スタッフ、とくに看護師の対応が患者を刺激することもあります。新卒看護師であれば、看護技術の低さから患者を刺激することもありますし、ベテラン看護師でも慣れているからこそ言動が軽率になることもあります。本人の精神症状が落ち着いていてもこれでは意味がなくなりますよね。
まとめ
暴力の原因や要因について簡単に解説しました。暴力の要因としては、患者自身の要因、環境要因、周りの人の要因の3つがあることがわかりました。裏を返せば、患者の刺激になっているところを改善すれば、暴力は最小限に留めることも可能であるということです。医師や看護師や家族など周りの意見だけでなく、患者が負担になっていること、ストレスになっていることを確認して、刺激を取り除く看護をできれば幸いです。