看護技術

血中濃度が命!気分安定薬の作用、副作用、看護の観察ポイントを解説!

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気分安定薬とは?

気分安定薬とは、抗うつ作用、抗躁作用の両方も持ち、気分変動が起こる頻度を下げてうつ状態や躁状態になるのを予防する効果があるお薬の総称です。

抗不安薬をマイナートランキライザー、抗精神病薬をメジャートランキライザーと言ったりしますが、気分安定薬はムードスタビライザー(mood stabilizer)といったりもします。

「気分安定剤」「気分安定薬」と聞くと、リラックスできる、もしくは気分が良くなると勘違いしている患者が未だに多くいるように思います。

しかし、気分安定といっても、医療的には「うつ状態」や「躁状態」といった気分を指していて、「ああ今日は気分がいいなぁ」といった生優しい気分といいものではありません。

気分安定薬は大きく分けると、炭酸リチウム、バルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピン、ラモトリギンの4つがあります。そして気分安定薬ではないですが、抗精神病薬のオランザピンやエビリファイの2つも気分安定薬と併用して使われています。

 

気分安定薬の作用機序と効果

気分安定薬の作用機序はいまだに明らかになっていない部分が多いです。

わかっているのは、気分安定薬単独では躁状態やうつ状態を治療できるほどの薬効がないことです。

気分安定薬は、その他の抗精神病薬や抗うつ薬と併用することで、それらの薬の効果を増強したり、維持期に入ったときの再発予防するためのお薬といったイメージを持ちましょう。

上記で説明した通りいくつか気分安定薬はありますが、大きく分ける3つにわけることができます。

まず「抗躁薬」である炭酸リチウム、「抗てんかん薬」であるバルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピン、ラモトリギン、そして最後が「抗精神病薬」であるオランザピンやアリピプラゾールです。

後述する気分安定薬の種類でそれぞれについて詳しく解説します。

 

気分安定薬の種類

気分安定薬の種類
  • 炭酸リチウム(リーマス)
  • バルプロ酸ナトリウム(デパケン)
  • カルバマゼピン(テグレトール)
  • ラモトリギン(ラミクタール)
  • オランザピン(ジプレキサ)
  • アリピプラゾール(エビリファイ)

炭酸リチウム(リーマス)

炭酸リチウムは、1950年ごろより躁状態の患者に効果があることがわかっており、治療に使われていますが、現在もなお脳内でリチウムがどのように作用して躁状態を改善、予防しているのかわかっていません。

しかし、炭酸リチウムは再発予防に大きな薬効があります。そのほかにも、抗躁効果、抗うつ効果もあり、また自殺予防効果もあるお薬でもあります。

躁状態においては、気分爽快感か多幸感がある古典的な躁状態に効果を発揮します。

一方で、炭酸リチウムは血中濃度半減期が18時間~24時間と長く、血中濃度が安定するのにも内服後7日ほどかかるため、十分な効果が得られるまでに時間がかかるお薬です。

また、炭酸リチウムは治療効果が発揮される濃度である治療域とリチウム中毒が発生する中毒域がとても近いことも有名です。

そのため炭酸リチウムを内服しはじめた患者がいた場合、看護師は定期的な採血の指示をもらうことはもちろんのこと、リチウム中毒で発生する症状の観察が必要となります。

バルプロ酸ナトリウム(デパケン)

バルプロ酸ナトリウム(デパケン)もリチウムと同じく歴史の古いお薬で、抗てんかん薬として使用される中で、気分安定の効果が発見されたお薬です。

症状として不機嫌さのある患者、うつ状態と躁状態が混合状態にある患者、躁うつが急速に交代する患者にバルプロ酸ナトリウムが使用されるケースが多いです。

デパケンは、抗躁効果と再発予防に効果を発揮するお薬です。抗うつ効果は期待が薄いのですが、その他の気分安定薬に比べて安全性が高いため、使用される頻度は高いように感じます。

ただ欠点としては錠剤がとんでもなくでかいことです。飲みにくそうな患者を頻繁に目撃することでも有名なお薬です。

また、他の気分安定薬に比べて安全性が高いといっても、肝障害を伴わない高アンモニア血症を引き起こすことがあります。

無症候性のこともあり、軽度の眠気から~昏睡状態に至る意識障害、運動失調や振戦などを呈することもあるため、看護の観察が求められるお薬でもあります。

カルバマゼピン(テグレトール)

カルバマゼピンも抗てんかん薬として歴史が古いお薬です。

デパケンに比べて、抗躁効果が強く、デパケンでも躁状態の改善が見られない場合に検討されるお薬です。

症状としては精神病症状や錯乱状態がある患者にはカルバマゼピンが比較的有効とされています。

しかしカルバマゼピンはその他の気分安定薬に比べると、重篤な副作用が多く注意が必要です。副作用については後述します。

カルバマゼピンは、血中濃度半減期が5時間~26時間と個人差が大きく、血液検査によって血中濃度のモニタリングと、看護師による副作用の出現の有無の観察が不可欠なお薬でもあります。

ラモトリギン(ラミクタール)

ラモトリギン(ラミクタール)は比較的新しい抗てんかん薬です。難治性のてんかん患者の治療薬として開発されたお薬ですが、気分安定薬の中でも抗うつ効果があるお薬です。

しかし、抗躁効果は小さいため、うつ傾向が強い患者に使用されます。

新しいお薬なので副作用は少なく安全性が高いのが特徴ですが、重篤な薬疹が出現することがあるため、ラモトリギンを開始直後の患者の全身の皮膚観察は欠かさずに必要です。

また、気分安定薬の併用による血中濃度が大きく変化することによる相互作用もあるため、副作用の出現に敏感になる必要があるお薬でもあります。

 

気分安定薬の副作用

気分安定薬に共通する副作用と対処方法

気分安定薬の副作用は、その種類の豊富さ故に、さまざまな副作用が出現します。

よく見られる副作用としてあげられるのは以下のようなものがあります。

気分安定薬のよく見られる副作用
  • 振戦
  • 多飲・多尿
  • 消化器症状(下痢、吐き気、嘔吐)
  • 体重増加
  • 眠気
  • ふらつき
  • めまい

 

リチウムの副作用~リチウム中毒~

上記でも言いましたが、炭酸リチウムは治療域と中毒域がとても近いため中毒症状の出現に注意する必要があります。

血中濃度によって下記の表のような中毒症状が出現します。

血中濃度 症状
1.0mEq/L 軽度振戦、不穏、イライラ感
1.5mEq/L 粗大な振戦
2.0mEq/L 腱反射亢進、構音障害
2.5mEq/L ミオクローヌス、他の不随運動、失調、錯乱
3.0mEq/L せん妄、昏睡、けいれん
3.5mEq/L 生命の危機

 

 

バルプロ酸ナトリウム(デパケン)の副作用~肝機能障害とアンモニア血症~

気分安定薬に限らず、ほぼすべてのお薬は肝臓で分解されて身体から排出されます。そのため肝臓にダメージを与えることもしばしばあります。

特にデパケンをはじめとするバルプロ酸ナトリウムでは肝機能障害を起こすことがあります。

肝臓は予備能が高いため、一部が障害されてもその他の部分でフォローできるため副作用の出現が遅く発見が遅れることがあります。

気分安定薬を内服している患者は定期的に採血を行っているので血中濃度や肝機能の確認はしているはずですが、まれに急激に肝機能障害が起こることがあります。

黄疸や、吐き気、嘔吐、出血、けいれんなどなど症状が現れた際には肝機能障害を疑う目を持ち観察しましょう。

 

また上記でも解説したとおり、バルプロ酸ナトリウムを内服していると血中のアンモニア濃度が上昇することがあります。

アンモニアが身体にたまると、意識障害やてんかん発作などを引き起こします。

初期症状がほとんどなく無症状で昏睡などの症状を呈することも少なくありません。高アンモニア血症が疑われる症状がみられたときには、主治医への報告と採血のオーダー、デパケン中止の指示を仰ぎましょう。

 

 

バルプロ酸ナトリウム、ラミクタールの副作用~スティブンス・ジョンソン症候群~

カルバマゼピンやラミクタールでは、重篤な皮膚症状であるスティブンス・ジョンソン症候群が出現するリスクがあります。

スティブンス・ジョンソン症候群とは、紅斑、皮疹、水疱、びらんが皮膚や粘膜に広く現れます。悪化すると高熱や悪心、時には眼球に症状が現れ失明することもあります。

スティブンス・ジョンソン症候群が重症化するとライエル症候群に移行します。ライエル症候群になるとほぼ全身に及ぶ紅斑、水疱、表皮剥離、びらんが発生し、表皮細胞の全層性壊死性変化が現れます。当然ながら生命の危機に瀕する状態となります。

 

気分安定薬内服時の看護のポイント

上記のような副作用は、複数のお薬を飲んでいるため精査が難しい場合があります。

しかし、基本的には副作用と思われる症状が現れた場合には、主治医へ報告し採血のオーダーをもらいましょう。

採血によって気分安定薬の血中濃度を知ることで気分安定薬による副作用なのかそれともそれ以外のものなのを区別できることがあります。

また、お薬の開始時期や1週~2週の間は特に副作用の出現が顕著です。

気分安定薬は治療域の血中濃度に達する前に副作用が出現することもあるため、あらかじめ患者に副作用の出現が先であることを理解してもらい、拒薬や怠薬の原因にならないようにすることが重要です。

血中濃度が上昇する原因を除去する

気分安定薬は血中濃度が重要です。

お薬の量が増量になれば、血中濃度が上昇するのは当然ですが、それ以外にも血中濃度が上昇する原因を理解して、患者に指導していくことが重要です。

結果的に気分安定薬の血中濃度が上昇する原因
・脱水
・シックデイ

 

脱水は、血中の水分や電解質が体の外へ創出されるため、結果的に気分安定薬の血中濃度が上昇する原因になります。

患者には適宜水分補給を促し脱水にならないように注意が必要です。特に高齢の患者では無自覚に脱水が進行することも少なくありません。

シックデイは、主病とは関係なく風邪や体調不良の時に、脱水と同じように栄養失調、水分摂取不足によって結果的に気分安定薬の血中濃度が上昇する原因となります。体調不良のときには内科へ受診することはもちろん、精神科へも一報入れる癖をつけてもらいましょう。

まとめ

気分安定薬について簡単に解説し、気分安定薬内服中の看護についても要所要所で解説しました。

気分安定薬は血中濃度が大切な指標になりますので、定期的に行われている採血のデータに目を通しておくこと、さらに気分安定薬の血中濃度だけでなく、肝機能データ、電解質バランス、アンモニアなどの血液データにも目を通し、重篤な副作用の兆候がないか確認して看護にあたりましょう。

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