
こんな疑問をお持ちではありませんか?
統合失調症の急性期は活動エネルギーが高く、陽性症状による幻覚や妄想が著明に見られます。
陽性症状に左右された行動が多く、病識がもてず、治療への理解も得られないことも少なくありません。
今回はそんな統合失調症の急性期の看護について、看護目標から観察ポイント、実際の看護ケアについて解説してきます。
目次
統合失調症の急性期看護のキーワードは睡眠、薬物療法、セルフケア能力の3つ
統合失調症の急性期看護のキーワードは、睡眠、薬物療法、セルフケア能力の3つです。
いまからいろいろと説明しますが、重要となるキーワードを念頭において読めばより学習効果が上がりますよ。
- 睡眠
- 薬物療法
- セルフケア能力
統合失調症の看護目標とは?
症状が激しく、病識の理解ができない状態であることも多いため、セルフケア能力も不足します。場合によっては生理的に必要な行動も取れないため衰弱や脱水など生命の危機に瀕することもあります。
入院後は、陽性症状が縮小するように、休息(睡眠)を促します。また、自傷、他害も評価し隔離や拘束も検討する必要があります。
幻覚、妄想に左右されて障害される日常生活のセルフケアの不足を介助、援助する。
心身ともにエネルギーを激しく消費しているため安静に、休息できるようにする。
自傷、他害のリスクを評価し安全に生活できるようにする
内服を調整し規則的に能動的に行えるように援助する
観察ポイントは睡眠、内服、セルフケア能力

統合失調症の急性期でもっとも重要な観察ポイントは睡眠の状況です。
急性期には薬物療法で増薬がされますが、それでも休息が取れない患者はたくさんいます。
休息が取れているか、いないかの指標になるのが睡眠です。
睡眠の具体的な観察ポイントは以下ののようなものがあります。
- 睡眠時間
- 追加眠剤の内服の有無
- 入眠の時間帯、起床時間帯
- 睡眠中の体動の有無(本当に寝れているのか)
- 入眠困難感の有無
- 中途覚醒の有無
- 熟睡感の有無
- 本人の睡眠の自己評価(実際の睡眠時間と評価にずれがないか)
急性期には休息がもっとも大きなお薬となります。陽性症状の縮小には睡眠が不可欠なので睡眠状況をしっかりと観察しましょう。
また、急性期は特に、陽性症状が激しいため、その影響の観察が必要がとなります。主に以下の症状の観察ポイントがあります。
- 患者の表情、言動、行動から患者の状態を観察する
- 幻覚、妄想の有無、程度
- 意思疎通の有無、程度
- 集中力や判断能力、現実検討能力の程度
- 興奮や攻撃性の有無、程度
- 自傷、他害のリスクと程度
陽性症状の縮小のためには、薬物療法も重要となるため以下のような観察ポイントを意識して対応しましょう。
- 内服状況
- 拒薬の有無(舌の下に隠していないか、内服したふりをしていないか)
- 病識の有無
- 能動的な内服or受動的な内服か
症状改善のためには薬物療法は確実に行うことで早期に急性期を脱することができます。主治医に内服状況の報告は欠かしてはいけません。
清潔行動、睡眠、食事、排泄、更衣などのセルフケア能力が著しく障害されることもすくなくないため、それらの観察も必要があります。以下のようなセルフケア能力の観察ポイントがあります。
- 活動量の程度
- 食事の摂取量、摂取時間
- 排泄状況(麻痺性イレウスに注意)
- 清潔行動の有無、自立度
- 血液データでの栄養状況の確認
- 血液データでの体液バランスの確認
- 飲水状況の確認(多飲水、水中毒に注意)
セルフケアが不足している場合には、援助が必要なります。
実際の看護ケアも睡眠、内服、セルフケア介助が重要

実際の看護はその観察したことに応じて対応したらいいですね。
実際の看護も睡眠による休息、薬物治療、日常生活におけるセルフケア能力の3つが重要となります。
- 安静に睡眠がとれるように援助する
- 内服が確実に行えるように調整し、副作用の観察を行う
- 清潔行動、食事、排泄、更衣などのセルフケア行動が行えるようにケアを行う
安静に睡眠がとれるように援助する
陽性症状により睡眠が障害され、不眠となっている患者がほとんどです。安静に睡眠、休息がとれるようにします。
- ベッドの高さの調整
- 室内温度の調整
- 不安感の除去、場合によっては傾聴
- 主治医指示の追加眠剤の使用
内服を確実に行い、副作用に留意
統合失調症の急性期は薬物療法が中心となるため、内服行動がしっかり行えるように調整を行います。
また増薬されるため、錐体外路症状、麻痺性イレウス、呼吸抑制、血圧低下、悪性症候群などの副作用を注意して観察する必要があります。
- 内服援助、見守り
- 医師指示の元必要時ハロペリドール(セレネース+アキネトン)による筋肉注射
- アカシジア、ジスキネジア、ジストニアなどの錐体外路症状を観察する
- 呼吸抑制、血圧低下などの身体管理
急性期の基本的な対応

患者さんの状態をみながらコミュニケーションしたり、処置をしたらいいですよね?
患者の自傷他害の恐れはいつでも付きまといます。
自傷行為については荷物の持ち込みチェック、環境調整を行い、隔離室内に入室している場合には適宜巡回観察、モニター観察をおこいましょう。
また、他害に関しては、患者と対応する際に1人では対応せず、複数のスタッフで対応します。基本的には2人で、男性看護師がいるとなおよし。
患者に近づくときも緊張感をあたえないよう、穏やかな対応でゆっくり近づきます。
もし、陽性症状によって疎通が難しく「ここから出せよ」「ぜってぇーゆるさねぇ」などと言動、行動が見られる際には、無理に関わらず興奮が縮小するのを待ちます。
また、手や足が飛んでくることもしばしばあるので、看護師と患者の間で適度な距離感を保つことも重要です。適度とは、拳やキック、飛びつきなどがあっても対応できる距離感です。‥経験ですね。
【まとめ】統合失調症の急性期は睡眠と薬物療法、セルフケアがキーワード!
統合失調症の急性期看護は、睡眠、薬物療法、セルフケアがキーワードです。
主治医の指示のもとでまず薬物療法による鎮静が行われます。
その上で徐々に睡眠がとれるようになれば、幻覚、妄想といった陽性症状も落ち着いてきます。
患者の言動、行動を観察してセルフケア能力、現実検討能力を引き出す看護を行ううちに、徐々に消耗期や回復期に移行していきます。
患者はもちろん、看護師も安全に急性期を脱することができるように看護を行っていきましょう。